アカデミックプラザ
高タンパク液状食品を対象とする高電界パルス殺菌の大流量処理
- 口頭発表あり
2024年06月05日(水)14:50~15:20
テーマ
衛生対策・品質管理(殺菌、洗浄、異物除去含む)
研究機関名
熊本大学 産業ナノマテリアル研究所 バイオマテリアル部門 応用バイオエレクトリクス研究室
代表者名
勝木 淳
発表概要文
液状食品の非加熱殺菌: 高電界パルス(PEF)は、液中に浮遊する細胞を選択的かつ非加熱的に傷害することから、液状食品の非加熱殺菌に利用できる。食品に含まれる分子やクラスター状の粒子状物質へのPEFの直接的な影響は小さいので、熱変性を起こしやすい高タンパク液状食品を本来の風味や物性を保ったまま物理殺菌することが原理的には可能である。 現状の課題: バッチ処理または小流量処理ではPEFの殺菌効果が見られるものの、大流量処理ではPEF処理槽内で液体の速度分布が生じることから、処理の不一様性が生じ殺菌効果の低下する。また、速度分布に起因する局所的な液温上昇が生じ、食品成分の変性・凝固、電極への付着、堆積を引き起こし、結果的に流路の詰まりや絶縁破壊を生じさせる。 本研究の特徴: PEF処理中の流体の流れと液温分布を可視化し、併せて流体/伝熱/電磁界を統合した物理シミュレーション解析を駆使して、大流量処理に特有の現象の理解に取り組んだ。その上で速度分布に起因する局所加熱を緩和する新しい発想のPEF殺菌処理槽を設計・製作した。さらに、このPEF処理槽と温熱工程から成る流量10 L/hの殺菌装置を製作し、牛乳や液卵などの高タンパク液状食品に対して、従前研究で実現されていない低温殺菌性能と耐久性の両立を達成した。 実用化に向けた展開: 本研究は、食品成分を変性させない低温物理殺菌法の実用化への道を拓いた。今後、実用化に向けて液状食品の流量を大きくした200 L/hのパイロット試験を実施中である。