アカデミックプラザ
環境の変動に伴う新たな水産資源を用いた無駄のない食品加工技術 -特に道産小型ブリを活用した複数の調味料素材への変換技術についてー
- 口頭発表あり
2024年06月05日(水)16:10~16:40
テーマ
環境対策・リサイクル(廃棄物処理、カーボンニュートラル含む)
研究機関名
酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 発酵科学研究室、地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 食品加工研究センター・網走水産試験場
代表者名
舩津 保浩(酪農学園大学)
発表概要文
近年, 地球温暖化などの影響で北海道ではブリの漁獲量が増加し,年間漁獲量が1万トンを超えている。道産ブリは天然もので小型魚が多く, 特に8月までに漁獲される小型ブリは脂肪が少ない。1990年以降日本近海のカツオ漁獲量が減少し, かつお節原料が不足していることから新たな節原料が求められている。節原料に適したカツオは脂肪含量が少ないことが知られている。一方, 食品業界では水産加工原料が高騰する中, ブリを無駄なく加工する技術開発が必要とされている。本研究では北海道で漁獲される小型ブリを原料とし, かつお節の一般的な製法を元にブリ節への加工特性を明らかにし, ブリに適した新たな節 (成形節) の開発を行った。次に節加工残滓を素材とした異なる発酵法で発酵調味料を製造し,その品質特性を調査することを目的とした。かつお節の製造方法によるブリ節の製造を行ったところかつお節は全てで削り節を製造できたのに対し, ブリ節は削り節にすると千切れや粉状に砕けるものが見られた (写真1)。原料魚の脂肪料別ブリ節の外観を観察すると, 原料魚の粗脂肪量が2.2%では形状が揃った削り節となるが、3.0%では削り節の縁がわずかに粗くなったが外観は概ね良好であった。しかし, 5.9%になると粉末となったことから削り節用のブリ節は原料魚の粗脂肪が3.0%以下のものが適していた (写真2)。また煮熟したブリ魚肉のペーストを成形して焙乾する成形節の製法により, 粗脂肪が6.6%以下の原料を用いることで削り節に利用できる節の製造が可能となった (写真3)。発酵調味料は2種類の発酵法 (麹と酵母添加区, 酵素と酵母添加区) で製造したが, いずれの方法でも調味料の全窒素分と無塩可溶性固形分はJASの大豆濃口醤油の特級相当で, 酵素と酵母添加区の方が麹と酵母添加区より高く, 両者の呈味はうま味や酸味などの点で異なった。 以上の結果より, 道産ブリを無駄なく利用し, 呈味性を向上させる複数の食品素材の製造が可能であることが示唆された。