アカデミックプラザ
植物由来物質からの代替肉製造技術開発と技術経済評価
- 口頭発表あり
2024年06月04日(火)15:30~16:00
テーマ
フードテック(代替食品など)
研究機関名
京都大学大学院工学研究科化学工学専攻分離工学分野
代表者名
中川究也
発表概要文
人口増加と環境対策を進める上で,新たなタンパク源の確保は喫緊の課題である.また,高齢者やダイエット志向の若年者等の栄養不足も社会問題となっている.本発表では,大豆を原料として,ステーキサイズの代替肉製造技術を報告する.我々の研究グループは,大豆由来繊維の作製や大豆由来ゲル状構造体の組み込み,凍結整列技術による組織状構造の形成を通じて大型で畜肉に比肩する食感の大豆食品を開発してきた.また,大豆代替肉の上市を見据え,技術経済評価(TEA)を実施し,その商業化の可能性も検証している.年間生産能力100トンの工業的規模での生産を想定した場合,生産コストの主な決定要因は原材料費(32%)と人件費(24%)であった.低温を維持する工程が多いことによるエネルギーコスト増が懸念されたが,実際には影響は軽微と見積もられた.製品の最低販売価格は1.18米ドル/100gと推算され,商業的に競争力があると結論に至っている.生産工程の合理化によって収益の向上が可能なレベルである.開発品は,不均一な筋肉組織を想起させ,肉らしい食感が実現できている.また,植物ベースの高栄養食であり,低い環境負荷で製造できるとともに,栄養不足を解決できる1つの手段となろう.現状,いくつもの課題があるが,今後,スケールアップにおける問題点なども改善していき,広範な食のニーズに応えられる製品としたい.将来的に植物ベースの代替肉製造において,本研究における新規法がその一助となることに期待している.